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移動距離の向こう側

by Yuki Hattori

少し前に「アイデアと移動距離」というSNAPを書いた。アイデアは移動距離に比例するのかどうかを、自分の体と脳を使って実験してみようという試みで、最近はとにかく面白そうな場所があればあまり深く考えずに足を伸ばしている。 

僕の尊敬する先輩たちは、ほぼ例外なく移動を続けていて、ある人は連絡するたびにいる場所が違うし、ある人は東京に住んでいるのに毎回会うのは別の町。文字通り日本中、いや世界中を飛び回っている人もいて、影響されやすい僕はそんな先輩たちを真似て、好奇心の赴くままいろいろな町へ行っている。ここ数ヶ月は海外にも積極的に出かけていって、夜行列車に乗ったり船に乗ったりまぁ忙しい。 

で、何か劇的な変化があったかというとそうでもないんだけど、インプットの「質」について気をつけるようになったのは一つの発見かもしれないと思い、ここに書き残しておくことにする。 

僕のように、常にアウトプットを求められる仕事をしていると、何をインプットするかがものすごく重要で、良いものにできるだけ触れている必要がある。 僕にとっての良いものというのは、革新的なもの、美しいもの、面白いもの、古くから残っているもの、人の心を動かすものなどで、それは場所のこともあれば、モノや音楽、ときには人だったりする。健康な体を作るには栄養価の高い食事が必要なように、良質なインプットからしか良質なアウトプットは生まれない。

ただそうはいっても、良いものは向こうからやってきてくれるわけではなく、そこにたどり着くための嗅覚が必要だし、面白いものを教えてくれる友達や知らない世界に飛び込む度胸も必要で、それらを得るにはとにかく自分が動くしかない。 

では動くとはなにか。 

一つ例を挙げると、例えば、沖縄に関連したWebサイトのデザインをするとして、まず自分の中にある沖縄のイメージや、過去の滞在で得た情報、ネット検索や各種の資料などから「沖縄らしさ」を作っていく。ここまででもある程度の水準まではいけるだろうし、案件によってはそれでOKという場合もあるかもしれない。 

でももう一歩奥へ踏み込むために、ここで一度沖縄に行ってみる。すると何が起こるか。 自分が作っていた「机上の沖縄」と目の前に広がる「本物の沖縄」とのギャップに気がつく。

このギャップが僕にとって宝になる。

どこかの通りを歩いているとき、あるビーチに着いたとき、「うわー、この景色は沖縄らしいなぁ」と感じたら、自分は何をみて沖縄らしいと感じたのかを分析する。植物の色の組み合わせや彩度、壁のテクスチャや海の色であったりするそれらの要素を一つ一つ分解して、制作物に落とし込んでいく。 これがインプットの「質」で、フィルターのかかった"SNS映え"する画像とは情報の種類が違う。

あたりまえだけど最も上質な資料は沖縄にあり、検索結果の中にはない。つまり質の高いインプットを得るには、そこへ行くのが一番早い。 

もうしばらく移動を続けてみようと思う。


Yuki Hattori
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