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by Yuki Hattori

─ 服部さんは自分らしく自由に生きていていいですね。

昨日、ある人からこんなことを言われた。その人と会うのは昨日が初めてで、僕の経歴や作るものに興味があると連絡をくれたので、ノコノコ東京まで会いに行くことにした。最初のコンタクトでいきなり会いたいと言ってくれる人には基本的に会うことにしている。

古びた喫茶店でカレーを食べながら、梅雨明けを告げるニュースを聞いた後、急な坂を登った先にあるビルでその人と会った。ああこれは重要な出会いになるな、と直感で感じた。時々そういう出会いがある。僕はこれまで考えてきたことやこれからどうしていきたいか、なぜWebデザイナーをしているのかなど、珍しく饒舌に話していた。そして冒頭の一言。

─ 服部さんは自分らしく自由に生きていていいですね。

この言葉が今でも頭の中で回っている。自分は自由に生きてきたのだろうか。
もう20年も経つのか、中学2年生のとき「考える」ということにハマりすぎて、学校にいけなくなった。昼夜逆転の生活が続き、なんとか進学した高校も人より1年多く通う羽目になった。カウンターカルチャーとやらに憧れてヒップホップの真似事をしてみたものの、ただひねくれていることをかっこいいと勘違いしたまま20代を過ごした。縁あって一度だけ就職もしたけれど、結局その会社でも何も残せずに辞めてしまった。そしてはじき出されるようにバリへ。

いつも集団に馴染めず、なかなか人から理解されにくい生き方をしてきたから、むしろ不自由なことや自分を殺すことのほうが多かったし、今だって何枚も猫をかぶることでどうにか毎日を暮らしている。唯一自分のままでいられる時間を見つけてはしゃいでいたけれど、その時間はもう届かないところへ行ってしまった。

自由に生きる、ということをたぶん僕はまだできていない。ほんとうに自由に生きるには、もっと多くを失わないといけないのだろう。何かを失う、ということはその分のスペースを得るということで、喪失と獲得は同義。これまでを振り返ってみると、何かを得るとき、その前に必ず何かを失っている。失ったものが大きいほど、それに比例するように得るものも大きかった。

昨日、ポカンと穴が空いてしまったスペースを埋めるように、とても大きなものが入ってきた。


Yuki Hattori
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