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しかしMPが足りない

by Yuki Hattori

師走。いろんなことが慌ただしく過ぎていって、みんな忙しそうにしている。そんなムードに流されて、僕もなんとなく気ぜわしい毎日を送っている。

そうした日々のなか仕事に追われていると、何かを作ろうとしても「しかしMPが足りない!」みたいなことがよくある。ドラクエ世代の人には説明不要だと思うけれど、MPとはマジックポイント、魔法を使うためのエネルギーのことで、ここで言う魔法とは、手から火を出したりすることではなくて、いわゆる「閃き」のこと。それを生み出す力が足りないことがある。もう何もでてこないよ、と。

僕の仕事は、積みあがったタスクを淡々とこなしていくというよりは閃きに左右されるものが多く、これがいつでも自由に使えればもっとスムーズに仕事が進むのだろうけど、ことはそう単純ではない。

閃きは、時間がないときはまったくと言っていいほど力を貸してくれない。それでも〆切は待ってくれないから、そういうときはHP(ヒットポイント)、つまり体力勝負になる。作っては壊し作っては壊し、膨大なトライ&エラーを積み上げた末にようやくぼんやりと形が見えてくるわけだけど、この「ぼんやり」のためにどれだけの時間を使うことか。で、その「ぼんやり」がいいものであるとは限らなくて、むしろそうでない場合のほうが多い。それらしく体裁だけ整えてとりあえず納品、みたいなことができない僕は、夜な夜なこういうことをやってばかりで気がつけばいつも時間がない。

そんな日々からの脱出のカギを握る「閃き」の謎に迫るため、まずはこれまで自分はどういうときに閃いていたのかを振り返ってみることにした。

過去に自分がいい仕事ができたときのことを改めて思い返してみると、重要な閃きが生まれる瞬間はいつも「ハマっている」か「遊んでいる」かのどっちかということが分かった。

1つ目の「ハマっている」というのは、簡単に言うとものすごく集中しているときで、僕は何かにハマると寝たり食べたりメールを返信したりするのを忘れてずーっと作業に没頭している。メンターによるとそれは過集中と言うそうで、あんまりいいことではないらしいのだけど、こういうときはスターを食ったマリオみたいにチカチカしているイメージで、無敵。アイデアは洪水のように溢れてくる。
このある種の「ゾーン」のような状態を、緩やかにキープするか、自在にゾーンに入れるようになれるのが理想的で、それには瞑想などのアプローチが今のところ効果があるように思う。

2つ目の「遊んでいる」は、文字通りただ純粋に遊んでいるとき。直近でいえば、ビーチでドローンを飛ばしているとき、深夜の山奥で踊り狂ってテントで眠るとき、畑で土にまみれながら無心で野菜を作っているときに、これだ!という閃きに遭遇した。
これは、好きなことをやっているときに脳内で分泌されるセロトニンがいい働きをするようだ、という遊びを正当化する絶好の言い訳を最近覚えたのだけれど(笑)、実際、全力で遊んでいるやつには勝てないので、遊ぶことはもしかしたら一番重要なのかもしれない。それに、上に書いた「ハマっている」とき、たぶん僕はWebを使って全力で遊んでいる。

で、この2つの状態をいかに意図的に作り出すか。

まず、集中状態に入るためには自分が「ハマる」事が欠かせないため、好奇心のアンテナを高く伸ばすこと、つまりいろんなことに興味を持てる自分でいる必要がある。「好きなことだけをやっていくために、好きなことを増やす」というのが最近思いついたロジックで、そのためには好奇心が大切。依頼者のやりたいことに興味が持てなければ僕の仕事は成立しないし、それができないなら僕じゃなくて別の人がやったほうがいい。

次に、どうやって仕事から頭を離すか。僕はこう見えていつも仕事のことを考えているので、そこから頭を離すことは意外に難しい。今のところ2つの方法が有効で、それは圏外に行くことと物理的に遠くにいくこと。それができればいかに小心者の僕でも開き直れるから、あとは思いっきり遊ぶに限る。

面白そうなことは何でもやってみる、どこへでも行ってみる、そして全力で楽しむ。これができているとき、なぜか閃きはふっと降りてくる。

と、ここまで書いて分かったのは、要するにポイントは「好奇心」ということらしい。で、好奇心の赴くままに動いていたら、気がついたら沖縄で海を見ていて、せっかくMPが貯まっていいアイデアが生まれそうなのにMacの充電が切れてしまった。人生というやつはなかなか難しい。

だから仕方なく、ビールを飲んでいます。仕方なくね。


Yuki Hattori
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