Fragment

点と線

by Yuki Hattori

昨日ある人とお酒を飲んでいて、人生は何がどう繋がっていくか分からないよね、という話になった。一見悪いことのように思える出来事も、時間が経って振り返ってみると重要な転機になっていたり、実は必要な経験だった、ということはよくある。

例えば3年前、僕はインドネシアで困難のど真ん中にいた。バリでの生活に区切りをつけて、一旦日本に帰って仕切り直そうと決めたものの、そこは常識も何もかもが違う異国の地。予期せぬトラブルに巻き込まれたり、飼い猫の出入国手続きを任せていた日本のエージェントに逃げられたりと、ことが一向に前に進まない。結局このゴタゴタで1年という時間を棒に振り、数百万円というお金を失った。

それらをようやく片付けて、何十年に一度とかいう大雪の日にどうにか帰国したものの、それから4ヶ月間は、成田空港内にある検疫所に愛猫が係留され、毎日朝晩2回の世話に通う日々。空港のすぐ近くにアパートを借りて、昼間は猫の檻の中にパソコンを持ち込んで仕事をした。たかが猫のためによくそこまでやるよね、という白い目と、実際に言葉でも随分いろいろなことを言われたけれど、そんなことは全然問題ではなくて、ただ自分の意思で決めたことを最後までやり遂げたかった。

全く恥ずかしい話だけれど、30を過ぎた大の男が帰国時の預金残高は5,000円しかなく、その5,000円を握りしめて東京へ行き、ここで何も得られなければ無一文という窮地に、まとまった仕事をくれた恩人たちへの感謝は言葉では簡単に言い表せない。

それから今日までの2年半は、それはもう死ぬほど働いた。仕事ができることが嬉しくて、停滞した分を取り返すように、寝るのも遊ぶのも後回しにしてとにかく働いた。さすがに今は少し落ち着いたけど、常時20件以上の案件を1人で抱え、大きなプロジェクトで重要な仕事を任せてもらったり、本を書かせてもらったり、講演で全国に呼んでもらったり、まぁ自分でも何が起きているのか分からないような目まぐるしい毎日。世の中のために、何か与えられた役割があるのだろうと解釈して、とにかく目の前の人の役に立つことだけを考えた。

そして今、ふと立ち止まってみると、自分は夢の中にいるということに気がつく。Webデザイナーになりたいと、全くの未経験からトランク一つでバリ島へ渡ったあの日に見ていた夢は、今こうしてちゃんと叶っている。僕の名刺には確かに「Webデザイナー」と書いてあって、間違いなく僕は今Webデザイナーとして生活をしている。

3年前の困難な日々を点として切り取ってみると、確かにあれは人生のどん底だったかもしれない。もちろん苦しかったし、どうして自分がこんな目にあうんだろうと思っていた。それでも、あのときの苦労があったから今こうして感じられる幸せがあり、あの経験がなかったら今みたいにサヴァイヴできていないかもしれない。

そう、人生は何がどう繋がっていくか分からない。人生を点ではなく線で見られるようになってから、随分と楽に生きられるようになった気がする。

そして、そんなめちゃくちゃな日々をずっと支えてくれていた人と、先日入籍をしました。ごく一部の近い人にしか伝えていなかったので、こういった場でのご報告となってしまったことをお許しください。

僕は明らかに家庭的な人間ではないので、多分これからも変わった道を行くのだと思いますが、自分たちなりに家族というものを作っていこうと思います。諸先輩方には今後ともご指導ご鞭撻のほど、友だちのみんなはこれからも変わらぬお付き合いのほど、どうかよろしくお願いいたします。


さあ、この点はどんな線に繋がっていくのかな。